たどってきた道には例外なく独自の歌が宿っています。耳をわたしの胸に押し当ててみれば、それが聞こえるはずです。この歌は常にわたしと共にあり、山頂の向こうへと舞い上がり、小さく忘れ去られた神々のいる溝で眠りました。歌はわたしの髪の毛の至る所に絡みつき、靴に重くのしかかります。日によっては、この歌はわたしの骨を伝ってどんな嵐にも負けないほどの大音声で歌い、別の日には、存在すらも忘れてしまうほど静かに調べをハミングします。それでも、わたしはいつも歌をしっかりと抱きとめ、マントを羽織り、歩き杖を手に、もう一度、足を踏み出すのです。

 わたしは歌を信じています。道を信じています。いつの日か、街に到着し、草むらに身を横たえ、こここそが運命づけられていた場所だと悟ると、信じています。道はわたしを我が家へと運んでくれる川なのです。

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ワンダーホーム

 『Wanderhome』は牧歌的なファンタジー・ロールプレイング・ゲームであり、動物の民の旅路、彼らの住まう世界、そして季節の移り変わりを描きます。このゲームは、草深い野原、苔むした聖堂、マルハナバチの群れ、サンドレスをまとったウサギ、サスペンダーをつけたヤモリ、満天の星空、想像しうる限り最も美しい日の入りなどに満ちあふれています。

 あなたはタマリンになって小さく忘れ去られた神々と踊るかもしれませんし、ウサギの郵便配達になり蛾に頼りながら荷物をしかるべきところに届けるかもしれませんし、ちっぽけな体に広い心と謎めいた過去を宿したトカゲになるかもしれません。その他数え切れないほどの、ワクワクする存在になれるのです。いずれにしても、わたしたちは必ず旅びと、すなわち村から村を巡りながらハイスの地をくまなく見て回る動物の民となります。そして、プレイと共に季節は移ろい、それに合わせてわたしたちも変わっていくのです。

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プレイキットについて

 このページで配布しているのは、『Wanderhome』のKickstarterに際して、デザイナーであるJay Dragon氏の提供されていた、プレイキットの非公式日本語訳です。Kickstarterプロジェクトは、6658人という数多くの支援者を集める大成功を収め、現在は正式版がリリースされています。この作品の魅力を少しでも伝えたい……そんな想いを抑えきれずに翻訳してしまいました。サードパーティー・ライセンスにのっとっての公開を許可してくださったPossum Creek Gamesには感謝あるのみです。

 『Wanderhome』は、Avery Alder氏のBelonging Outside Belongingというルールをベースとしており、ダイスなどのランダマイザーを使わず、ゲームマスターなしでプレイできます。より正確には、全員がゲームマスターの役割の一部を引き受けながら、旅先で起こる様々な出来事を即興的に生み出していくことになります。

 このプレイキット日本語版はあくまでファン作成の訳であり、Possum Creek Gamesのチェックなどを経ていない、非公式の代物です。きちんと許諾を得ているとはいえ、内容に関する責任はすべて訳者にあります。誤訳の指摘や、ご質問、ガイドの依頼などは訳者の方にお寄せください。プレイキットを読んで水が合うと思った方は、是非正式版の販売ページも覗いてみてください。絵本のような美しいイラスト満載の素晴らしいルールブックは、期待を裏切らない出来映えですよ。

それでは、よき旅を!

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